2024年10月の衆院選で与党が惨敗し、自民・公明で過半数を割り込んでしまいました。
これでは政策がすんなり通せないので、
国民民主か維新あたりと連立組むのかなー?
と投票直後は思ってたんですが、現在の流れを見るに
・連立は組まないまま、野党の国民民主党と協力して政策を通す
・国民民主党の協力を得るために、国民民主党が主張する政策に与党も協力する
という方向のようです。
で、その国民民主党の目玉政策が「年収103万円の壁を取っ払う」ことなので、今この数字が大変話題になっておりますね。
タイマムシンとしては、(FP3級持ってるくせに)このへん非常にボンヤリとした知識しかなかったので、ひとつ勉強しなおしてみようと思ったわけです。
というわけで、数日かけて調べてみた結果を備忘録代わりに書いていこうと思います。
そもそも年収の壁って?
年収の壁ってのは、
この範囲内の金額なら、稼いでも税金/社会保険料がかからないよ
(出典:厚生労働省)
っていう金額のことです。
現在、国民民主党絡みで話題になっている「103万円の壁」というのは、所得税に関する壁ですね。
つまり、103万円以下であれば、どんなに稼いでも所得税は一切かからないわけです。
この年収の壁、所得税・住民税・社会保険料でそれぞれバラバラで、さらにそれぞれ数種類ずつあるという、恐ろしく複雑怪奇な状態になっていて、素人には難しすぎますw
というわけで、タイマムシンが今回調べてみたのは、
「無条件で支払う税金/社会保険料がゼロになる金額」
のみとなっております。
悪しからずご了承お願いしますw
所得税の年収の壁「103万円」について
まずは、今一番話題になっている所得税の年収の壁「103万円の壁」について調べてみました。
所得税とは
所得税とは、個人の所得に対してかかる税金です。
所得税 (出典:国税庁)
国に収める税金(国税)なので、全国一律のルールで徴収されます。
計算式は以下のようになります。
所得税額 = 課税所得金額 ✕ 税率 ー 税額控除額
(課税所得金額 = 全ての所得合計 ー 経費 ー 所得控除)
税率については、以下のページに詳細が載っています。詳細な計算式も載っていますので、気になる方はご確認ください。
所得税の税率 (出典:国税庁)
「課税所得金額」について
税額の根拠となる「課税所得金額」ですが、こちらは基本的には所得から経費と控除を差し引いたものです。
課税所得金額=全ての所得合計ー経費ー所得控除
「所得」について
所得とは、その人の収入のことで、全部で10種類に分類されています。
- 1 利子所得
- 2 配当所得
- 3 不動産所得
- 4 事業所得
- 5 給与所得
- 6 退職所得
- 7 山林所得
- 8 譲渡所得
- 9 一時所得
- 10 雑所得
今回は単純化するために、「5 給与所得」に絞って考えてみます。
給与所得のみであれば、額面給与の金額がそのまま所得となります。
所得から差し引ける金額①「経費」
経費とは、「事業で利益を得るために支払う費用」のことです。
個人事業主や法人であれば、こちらはわかりやすいですね。
事業を行うための出費なら、全て経費計上できます。
書類仕事をするための筆記用具、パソコン等、机や椅子、店舗の建物建築の費用や家賃、出張のための旅費、取引先との会食費等、全て事業で利益を得るための出費です。
しかし給与所得のみのサラリーマンである場合、明確に「事業で利益を得るための出費」という判断ができないことが多く、また税金を源泉徴収される以上、経費を計上できるチャンスもありません。
しかしながら、サラリーマンでも「事業のための出費」を全くしていないかというと、そんなことありませんよね。
たとえば通勤時に使用する車や自転車、スーツや雨具、カバンなどは、給料の中から払ってはいますが、事業の用に供しています。
また、サラリーマンだって取引先と会食する人もいるでしょう。
プライベート用に買ったスマホで、仕事のための連絡をすることだってあると思います。
それらに出費しているにもかかわらず、
サラリーマンだけ経費が使えないのって、なんか不公平だよね
ってことで、サラリーマンの経費に相当するものが定められています。
それを「給与所得控除」といいます。
給与所得控除 (出典:国税庁)
上の国税庁のページを見ると、2024年(令和6年)現在では、年収によって金額が代わりますが、最低でも55万円は所得から差し引けるということです(つまり、55万円部分には所得税がかからない)。
つまり、サラリーマンでも
どんなに少なくても一人55万くらいは仕事のために使ってるよね
ってことです。
所得から差し引ける金額②「所得控除」
所得控除ってのは、
人それぞれいろんな事情があるんだから、それぞれの事情に合わせて課税額を調整した方がイイ感じだよね
ってな観点で、所得から差し引いて税金計算の対象外にできる金額のことです。
所得控除 (出典:国税庁)
所得控除は全部で15種類あります(2024年11月現在)。
雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除
(出典:国税庁)
詳細な説明は省きますが、例えばひとり親控除なら、
片親で子ども育ててて何かと大変だろうから、35万円分は所得税無しにしてあげるよー
ってな感じです。
大体の所得控除は、その条件に当てはまる人しか使えないんですが、唯一条件無しで使える所得控除があります。
それが一番最後の「基礎控除」です。
これがある理由は、ウィキペディアにはこう記載されています。
この基礎控除が存在する理由は、個人の所得のうち、本人の最低限度の生活を維持するのに必要な部分は担税力を持たないと考えられることにある
(出典:wikipedia)
タイマムシン流に言い換えると、
憲法で「健康で文化的な最低限度の生活」って謳ってるけど、それに必要な核心部分のお金に所得税かけちゃいけないよねー
ってとこでしょうかw
こちらの金額は48万円(2024年11月現在)となっていますので、全ての人はこの部分に税金がかからないことになります(年収が極端に多い人を除く)。
所得税の年収の壁が103万円になる理由
さて、ここまでの説明で、
・給与所得控除55万円
・基礎控除48万円
これらの部分には所得税がかからないことがわかりました。
前の段落の時点でピンと来ていた人も居ると思いますが、年収の壁の103万円ってのは、上記2つを合計した金額です。
55万円(給与所得控除) + 48万円(基礎控除) = 103万円
そして、所得税は課税所得金額✕税率です。
課税所得金額 = 額面給与 ー 給与所得控除 ー 基礎控除
= 額面給与 ー 55万円 ー 48万円
= 額面給与 ー 103万円
つまり、額面給与が103万円以下であれば、課税所得金額がゼロ以下になってしまうので、年収があっても所得税は全く払わなくてもいい、ということになります。
というわけで、年収をこの金額未満に抑えようとする人が出てくるわけですね。
「103万円の壁」を意識する必要がある人
所得税的には、この金額を超えた部分にしか税金かからないので、あまり意識する意味は無いです。
例えば年収が104万円になった場合、103万円を超えた部分、つまり1万円に対して5%、500円の所得税がかかるのみです。
年収103万円に比べれば、手取りは9500円増えているわけです。
というわけで、一人暮らしをしているなら、この「103万円の壁」は全く気にする必要が無いと思います。
問題は家族と一緒に暮らしている場合です。
この103万円という年収の金額ですが、そのまま税法上の扶養に入れるかどうかの線引になっていたりします。
なので、103万円を超えると強制的に扶養から外れることになって、世帯主の扶養(配偶者)控除が使えなくなっちゃうので、家族全体の税金が増えちゃったりします。
「103万円の壁」を意識する必要があるのは、世帯主の扶養に入っている人、ということですね。
ちなみにこの壁、1994年から30年変わっていないそうです。その頃に比べたら物価も上がってるので、103万円の枠内で生活してる人はだいぶ苦しくなってるんでしょうね…。
この辺は気が向いたら、また別記事を書くかも知れません。
住民税の年収の壁について
次に、住民税の「年収の壁」について見ていきます。
住民税とは
住民税は、都道府県と市町村に払う税金、つまり地方税です。
(2024年からは国税もちょっとだけ混じっているようですが)
主に地方の行政サービス(教育、福祉、消防・救急、ゴミ処理等)に使われています。
住民税について (出展:財務省)
単純化した計算式は以下の通りです。
課税所得金額 ✕ 住民税率 = 住民税の所得割額
住民税の所得割額 + 住民税の均等割額 = 住民税額
地方税なので、税率や均等割の金額は自治体によって多少違いはありますが、下記から大きく外れることはありません。
住民税率 = 10%(市町村民税率6% + 都道府県民税率4%)
均等割額 = 5000円(なぜか滋賀県彦根市は5800円でした…)
住民税の「課税所得金額」について
住民税の「課税所得金額」も、所得税の場合と計算式自体は同じです。
課税所得金額=全ての所得合計ー経費ー所得控除
住民税の場合の「経費」と「所得控除」
住民税の場合の「経費」も、所得税の場合と扱いは一緒で、給与所得のみの場合は「給与所得控除」が経費扱いとなります。
金額も55万円と、所得税における給与所得控除と同額です。
問題は「所得控除」の方です。
特に条件なしで「基礎控除」が使えるのは所得税の場合と同じなのですが、住民税における所得控除はなぜか43万円なんですね。
所得税の場合は48万円だったので、5万円少ないわけです。
つまり、住民税における給与所得控除と基礎控除を合計すると、98万円になります。
給与所得控除(55万円) + 基礎控除(43万円) = 98万円
住民税の年収の壁は98万円?
じゃあ、年収98万円以下なら、住民税の所得割額はゼロになるんだね!
住民税の「年収の壁」は98万円だったんだ!
って、思いますよね?w
僕も最初調べた時はそう思ってました。
実際、そういう解説になってるサイトもありました。
しかし、「住民税の年収の壁は100万円」って書いてあるサイトもあります。
どっちが正しいんだ?
って思ってよくよく調べて見ると、住民税にはもう一つ条件があることがわかりました。
住民税の非課税限度枠
住民税には「非課税限度枠」というものが設定されていて、以下の条件の場合住民税の所得割部分は非課税となります。
総所得金額が45万円以下の場合(年収で言えば100万円以下)
ここでまた「総所得金額」なんていう新しい言葉が出てきてますねw
こいつは計算要素を全て調べると割とややこしいんですが(の割に使える場面は少ないみたいですがw)、給与所得のみの人なら、
総所得金額 = 額面年収 ー 給与所得控除(55万円)
との認識で問題ないです。
つまり、年収100万円以下なら、総所得金額が45万円以下となるので、住民税の所得割部分は非課税となるということなんです。
なんてややこしいw
この辺は、国税庁のページにも記載がありました。
家族と税 (出典:国税庁)
ということで、一般的な住民税の年収の壁は、100万円が正解のようです。
均等割も含めて非課税になるケース
自治体によっては、上記の年収100万円以下であれば、所得割だけでなく均等割まで含めて、住民税が非課税となるようです。
ただ、自治体によっては別の基準が定められていることがあります。
例えば、僕の住んでいる滋賀県彦根市については、均等割が非課税になる基準として、
合計所得金額が38万円以下の場合(扶養者がいない場合)
という記載があります。
ここでまた「合計所得金額」なんて新しい言葉が出てきましたがw,要するに総所得金額と一緒だと思ってください(繰越控除とかがあると違うみたいですが、事業やってなきゃ関係ないです)
合計所得が38万ということは、年収で言えば93万円(38+55)になります。
彦根市の場合、住民税が完全に非課税になるのは、年収93万円以下の場合ということになりますね。
住民税の非課税範囲まとめ
住民税についてまとめると、以下の表のようになります。
年収 | 93万円以下 | 100万円以下 | 100万円超 |
均等割 | かからない | かかったりかからなかったり(自治体のルールによる) | かかる |
所得割 | かからない | かからない | かかる |
住民税の場合、均等割は基準を超えるといきなり5000円かかり出すので、所得税に比べてちょっと容赦無い感じですね。
93万円を超えて稼ぐなら、93万6000円くらいは稼ぐようにしましょうw
さらに所得割についても言及すると、年収100万円以下ならかからないのに、100万1円になった途端、98万円を超えた20001円の部分に10%課税されることになります。
税額は2000円です。
なので、100万円を超えて稼ぐなら、100万3000円くらいは稼ぎましょうw
社会保険料の年収の壁について
最後に、社会保険料の年収の壁について書いていきます。
社会保険とは?
社会保険とは、国民皆保険制度の一翼を担うもので、企業勤めの会社員や、条件を満たす短時間労働者(アルバイト・パートなど)が加入する保険です。
(自営業者などは、「国民健康保険」に加入)
社会保険には、以下の5種類があります。
事業者と従業員が折半して負担するもの
・健康保険 ・厚生年金保険 ・介護保険
双方が負担するけど、事業者側が多めに負担するもの
・雇用保険
事業者が全額負担するもの
・労災保険
このうち、事業者と従業員が完全に折半し、かつ加入条件も完全に同一である「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の3つのみを指して「社会保険」ということもあります(狭義の社会保険)。
狭義の社会保険だけで、標準報酬月額(ざっくり4〜6月の収入の平均)に対して30%ほどとなりますが、基本的には労使折半なので、被用者が負担するのは標準報酬月額の15%程度になります。
これらで回収した保険料が、医療費や年金、失業給付、労災給付などに当てられてるわけです。
一応「保険」という名目になっていますが、実質的には税金ですね。
社会保険の壁「106万円」と「130万円」
社会保険には、年収が一定未満であれば主たる生計維持者(世帯の中で最も収入が高い人)の扶養に入ることができるラインが定められています。
それが「年収130万円」で、このライン以下の年収であれば、主たる生計維持者の社会保険を利用できる状態になり、本人が社会保険料を負担しなくても、健康保険の保障を受けることができます。
ただ、本人の勤務先の規模によっては、「社会保険上の扶養には入ったままなんだけど、健康保険・厚生年金保険は勤務先の物に加入しなければならない」という年収のラインが設定されています。
このラインが「106万円」で、勤務先の従業員が51人以上の場合などが対象になります。
なので、社会保険には「106万円」と「130万円」の2つの壁があることになります。
(一人暮らしの人は、元々誰の扶養にも入ってないので、この壁は気にしなくていいです)
(2024.11.19追記)
この辺の解釈ですが、多少誤りを含んでいました。国民年金とも絡んで結構複雑なので、別記事を書く予定です。
壁を超えちゃった場合
これ、何が問題かというと、このラインを1円でも超えてしまうと、いきなり最低金額の社会保険料がかかるようになっちゃうことなんです。
例えば106万円の壁を超えてしまった場合、いきなり年間16万円ほどの社会保険料を負担することになります。
106万円まではほぼそのまま手取りになっていたのに、106万1円になった途端に手取りは90万円くらいになっちゃうわけです。
結構エグいです。
年収130万の壁の場合だと、超えると年間の社会保険料は19万ほどになります。
これでは、働き控えが起こるのも当然ですねw
もうちょっとこう、所得税の場合みたいに、超えた分にだけ一定割合でかかるような制度にできないもんでしょうか?
というわけで、これらの壁を超えるときには、増加する社会保険料分は余計に稼がないと損、ということになります。
所得税や住民税のことも考えれば、どーせ超えるなら、気にせず200万くらいまで稼いじゃうのが良いと思います。
この辺は調べれば調べるほど細かいルールがいっぱいあることがわかって、軽く絶望できますw
年収の壁まとめ
年収の壁をまとめると以下のようになります。
年収額 | 93万円以下 | 100万円以下 | 103万円以下 | 106万円以下 | 130万円以下 | 130万円超 |
住民税(均等割) | かからない | かかるかも | かかる | かかる | かかる | かかる |
住民税(所得割) | かからない | かからない | かかる | かかる | かかる | かかる |
所得税 | かからない | かからない | かからない | かかる | かかる | かかる |
社会保険料 | かからない | かからない | かからない | かからない | かかるかも | かかる |
この壁があるおかげで、
・働き控えをする人が増えて、人手不足に拍車がかかる
・収入が増えないので、生活の質が低下する
・収入が増えないので、景気が良くならない
・(特に社会保険の壁に関して)労働意欲が起きにくい
・年収の壁を企業側も意識すると、賃金を上げづらい
・税制が複雑になる(調べながら腹が立ってくるくらいw)
などなど、様々な問題が発生しているわけです。
というわけで、国民民主党には大いに期待しようと思います。
103万円の壁がなくなったら、単純にみんなの年収が上がりますからね。
でも個人的には、106万円と130万円の壁を見直すほうが効果が高い気がするんですけどねー…w
編集後記
この記事を仕上げる前日、越前市の所有物件の駐車場を掃除してきました。
ちょっと前にシルバー人材センターに草刈りを依頼したんですが、あまりに大量だったためか草のカスがいっぱい残ってたんです。
今この駐車場をakippaというサービスで日貸ししていますので、ちょっとこの汚れ具合はマズいかなと思いましてw、箒と塵取り持って行ってきました。
まあ、ちょっとはマシになったかな。
これのせいだとは思いますが、今日は背中がダルいですw
まあ、翌日に筋肉痛が出るだけマシだと思っておきましょうw
もうお掃除もシルバー人材センターに任せようかな…
ではまた。